「逆流性食道炎」は、食道へ胃酸が逆流することによって起こる食道の炎症の事です。
食道は、口から入った食物をぜん動運動によって胃の中に送りこむ輸送機能があり、同時に、食道には食べたものが逆流しないように、逆流防止機能が備わっていますが色々な理由で逆流することがあります。
原因
下部食道括約筋(LES)の緩み
年齢とともに、食道と胃のつなぎ目の下部食道括約筋の締りが悪くなり、胃酸が逆流しやすくなります。つまり、噴門を閉じる力が弱くなって、食物を飲みこむのと関係なく開いてしまいます。
食道裂孔の緩み
食道裂孔も食道と胃のつなぎ目を締めていますが、やはり年齢とともに緩んでしまい、ここから胃がはみだす「食道裂孔ヘルニア」になることもあります。
食道のぜん動運動が悪い
食道の動き(ぜん動運動)が悪いと、逆流した酸を胃へ戻すことができなくなります。
胃の圧力が上がる
食べ過ぎた後や胃のもたれを感じるときには、胃の圧力が高まり、胃酸が逆流しやすくなります。また、肥満や妊娠などでも胃に圧力がかかり、逆流しやすくなります。
検査と診断
「逆流性食道炎」の診断では、内視鏡検査が行われます。このほか、食道内の酸の状態をみる食道内pHモニタリング、食道のぜん動運動や下部食道括約筋の働きをみる食道内検査が行われることもあります。
内視鏡検査
「逆流性食道炎」の診断には、食道内視鏡検査が欠かせません。口から細い管(内視鏡)を入れて食道の粘膜の状態を直接観察します。
最新の電子スコープ検査では、食道や胃のなかの様子をテレビモニターでみられるために確定診断が可能となり、治療の経過も観察しやすくなりました。
なお、内視鏡検査にあたっては、前日の夜から食事などの制限があります。医療機関の指示に従いましょう。
食道内pHモニタリング
いわゆる「pHモニター」というもので、食道内の酸性度(pH)や食道に胃酸が逆流している時間や頻度を、24時間継続的に測定します。食道内のpHが4未満になったときに、胃酸の逆流と判断します。
この時間の長さが酸の逆流の程度を示します。
食道内圧検査
胃酸を押し戻す食道のぜん動運動や、下部食道括約筋の働きを測定します。24時間測定できる装置があります。
エックス線検査(レントゲン検査)
内視鏡検査や食道内pHモニタリングのほかに、エックス線検査が行われることもあります。この検査は、食道がんの診断にも有効です。
治療
「逆流性食道炎」の治療は、薬物療法が中心です。
酸の分泌を抑える薬
逆流性食道炎の直接の原因は胃酸。そのため、薬によって分泌される胃酸の量を抑え、食道への逆流を少なくします。こうした作用をもつ薬が、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2ブロッカーなどです。
ともに副作用が少なく安全ですが、とくにプロトンポンプ阻害薬(PPI)は、H2ブロッカーよりも強力に胃酸の分泌を抑えます。
食道の粘膜を保護する薬
食道粘膜が荒れてできた傷口を胃酸から守ります。速効性はありますが、持続性はありません。
酸を中和する薬
速効性はありますが持続性はなく、いったん中和しても胃酸が次々と分泌されるので効果は15~30分程度です。
消化管の運動機能を改善する薬
食道や胃の弱ったぜん動運動を回復させ、逆流してきた胃液を胃へ押し戻す機能を高めます。
胃酸の逆流を防ぐには、食生活、姿勢、腹圧が大きな3つのポイントです。胃酸の逆流が起きやすい状況は、それぞれ個人によって違います。毎日の生活で自分にあった食生活や姿勢を工夫すると効果的です。
気を付ける事
大食をさけ、刺激の強い食べ物はひかえめに
・ 食事は一度に食べ過ぎず、ゆっくりと。急いで食べると空気も一緒に飲み込んでしま
い、胃をふくらませるためにげっぷが出やすくなります。
・ お酒は噴門を緩めます。ひかえめに。
・ タバコは唾液分泌も減らします。ひかえめに。
・ 脂肪の多い食事は胃にもたれて、胃酸の逆流を起こしやすくします。強い香辛料、豆
類、チョコレート、炭酸飲料、コーヒーなどは注意です。
・ 食事時間は規則正しく、ゆっくりと。
お腹を強くしめつけない
・ ベルトや帯、コルセットはゆるめに。
・ 肥満や便秘は注意。
・ 妊娠中は胃が圧迫されるので、食事は一度にとらず、何回かに分けて食べましょう。
就寝は頭の高い姿勢で
・ 横になると「むねやけ」がする場合は、枕や座布団を重ねて、上体を高くして休みま
す。また、食後すぐに横にならないように。
・ 就寝直前の食事はさけます。
なるべく腰をのばして
腰の曲がった状態、前かがみなど、胃を圧迫する無理な姿勢はできるだけやめま
しょう。
ストレスの解消も有効です